ずぶ濡れの何か

去年のことです。遊びに出た旦那から「道に迷った。帰り遅くなる」とメールが届きました。
心配になって私が電話をかけると、旦那は「どうやって来たのかわからない。やたら暗くて寒い」と話していました。

しばらくして電話越しに、遠くの方から「うー、うー」と誰かがうめくような声が聞こえてきたんです。旦那もそれに気付いたようで、「何かいる」と呟きました。それからすぐにどこかへ走り出したようで、電話口からは荒い息と足音だけが聞こえるようになりました。

やがて、切羽詰まった声で「……ずぶ濡れ……何あれ……ヤバい……」と、途切れ途切れに呟きました。続けて、「なんか壁のマークを見て……ぶつぶつ言ってた……」と、息切れ混じりに呟く声も聞こえてきました。その声はひどく乱れていて、旦那が何かに強く怯えているのがはっきりと伝わってきました。

私が「何があったの?」と声をかけようとしたとき、今度は電話のすぐ近くから、「うー……うー……」という、先ほどよりも低いうめき声が聞こえてきました。その声に混じって、「……ろいの……」と聞き取れるような、かすれた声がしました。そこで通話は切れてしまいました。

この通話以降、旦那からの連絡は一切ありません。
私は警察に通報して捜索を依頼しましたが、今も手掛かりは見つかっていません。

 

管理人メモ
この旦那さんは寒く暗い場所に迷い込み、そこで説明できない現象に遭遇して失踪した。
これは桶地下に行ったとみられる多くの失踪者の証言と一致する。
そしてそこで出会った「ずぶ濡れの何か」
ぴちゃぴちゃという濡れた足音を聞いたという別の証言もあったが、それと同じ存在なのかもしれない。